しかし、それもいっきゅうの死と共に、消滅した。
「あなたっ!いっちゃん!」
覚悟していたいっきゅうの死。年齢の差。
転生し出会い、そして、また死別する。それを何度繰り返しただろう。何度繰り返そうと決して慣れはしない。慣れるはずもない。
その哀しみはいつも麻依をどん底へ突き落とす。
ただ、それでも、それまでは希望があった。
『大丈夫だよ。すぐ生まれ変わってくる。必ずキミを見つける。また出会おう!そして、また恋をしよう!熱い恋を!』
いっきゅうの残す言葉には、いつもそれがあった。
が、今回は違っていた。
眠るように麻依の傍らで息を引き取ったいっきゅうが残していった遺書は、おぼろげながら感じていたそのことをはっきりさせた。
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麻依。とうとう別れの時が来たようだ。
今までありがとう。たくさんの愛をありがとう。とても幸せだったよ。
30人の子宝にも恵まれてσ(^◇^;) 2人の(ほんとはただひとりの)まいのおかげだ。感謝してる。(補足:麻依との子どもが18人、前世の舞華との子供が12人)泣かないで、笑って見送っておくれ。
ただ・・・キミも気がついているだろうけど、今回の別れはちょっと特別かもしれない。
すぐに再会を約束できない。
オレたちは、別れのたびに再会を誓い合ってきた。何度でも転生して、意地でもキミの魂を探した。
でも、どうやら、しばらく、別々の道を歩まなければならないようだ。
しばらく前から、オレにはひとつの未来が見えていた。
できればそうあってほしいと願う未来だ。
そのために、あえて、別々の道を歩む必要がある。
ずっと手を携えて歩んできた。そして、強い絆を結んできた。その絆の強さを信じているからこそ、オレはあえて、その先のステージへと歩を進めようと思う。
麻依。よく聞いておくれ。キミは光の道を進むんだ。
オレは相反する世界へと行く。闇へと行く。
光の側からだけでは答えは見えてこないから、オレはあえて反対方向から攻めてみる。
再び出会うとき、オレとキミは、敵として向かい合うことになるかもしれない。
ちょっと(だけか?)きつい選択だが、オレとキミなら乗り越えられるはずだ。今までだって、たいがいの試練はくぐり抜けてきたじゃないか。
光と闇、相容れないはずの存在。際限なく戦い合う存在。
そのばかばかしい繰り返しに終止符を打つために。
光のキミと闇のオレが新たな世界を構築することができるか。新世界のアダムとイブになれるか。チャレンジだ。
きっとできると信じている。
なぜって、オレたちは、強く強く愛し合っているから。それはどんな姿になろうと永遠に変わらないから。
ひとつ、言っておく。どんな結末を迎えようと、けっして怯むな。けっして顔をそむけるな。けっして悔やむな。
大丈夫だ。心配するな。オレのことを信じてくれ。オレもキミを信じているから。
麻衣・・・・愛しているよ。ずっと、ずっと、何百年たとうと何千年たとうと、この世に生命が存在する限り、オレはキミに愛を誓うよ。
悪魔に心を売り渡そうと、その愛は変わらない。ぜったいに!
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(いっちゃん・・・私の方こそずっとずっとありがとう。とっても幸せだったわ。
うん、そうね、泣かないわ。とびっきりの笑顔で見送るわ。
今日という日を覚悟してたのに、言葉がでないわ。何を言っていいのかわからない。
そう、一つだけ、分かってるわ。私の気持ちは何があっても変わらない。
ずっとずっと変わらないわ。愛してる。あなただけを、いつまでも。)
そう心の中で返事をしたものの、その心の片隅で、麻依は覚悟を決めていた。
(そう・・私のいっちゃんはあなただけ。今、目の前で眠っているあなただけ。
今まで幸せに暮らしてきたあなただけ。
あなたはきっとこの地に生まれ変わってくるわ。それも分かってる。
でも、それはあなたじゃない。私のいっちゃんじゃない。それはまるっきりの別人。
ごめんなさい、そう思わせてね。でないと私、行動に移せない。一人で歩けない。
だって、しばらくって・・私、そんなに強くないわ。出会ったときは相対する立場だなんて・・・。
光と闇との戦いに終止符を打つ為だと言われたって、私には、あなたのように簡単に割り切れないわ。
そう、いつもあなたは見事に割り切って、前を見て進むけど、私は・・・・・。
だから・・・こう思うことにしたの。あなたはずっと私の中にいる。私のいっちゃんは、ずっと私の心の中・・・。
同じ魂の人物と出会っても、それは私のいっちゃんじゃない。決してそれはいっちゃんじゃない・・。
・・・そうでも思わないと、あなたを探してしまうわ。例え、あなたに拒絶されようと、離れてなんていられないわ。
だから、私はそう思うことにした。これは私の自己防御。
軽蔑していいのよ、私は少しも強くないし、自分がかわいいわ。世のため人のためよりも。
だから、想いが暴走しないように、心の中に閉じこめるの。
一人で歩かなければならないのなら、私には必要な事なの。いつまでもあなただけが私の支えなの。)
いっきゅうの葬儀を終え、身の回りのものを整理すると、麻依は子供たちを連れて緑峰山へ、巫女の里へ帰った。
いつも手を取り合って歩いてきた。その手を離し、これから来るべき、いや、進むべき、険しく孤独な道へ歩を進める為に。
※いっちゃんの遺書はみずきさんが書いてくださったものです。いつもありがとうございます。