2006年04月07日

黄金郷アドベンチャー・本章1/その3・談合決裂

 神官である紫鳳とテレパシーで連絡を取り、麻依は霊力の補助を受け、王子シジュザール、その叔父シャバラン、王子の幼なじみの剣士、カシュマ、町の代表者ゴリノス、そして、カルロスは海賊船へと転移した。

瘴気の中、彼女の霊力が守っている海賊船は5隻。そして、その中の1隻に転移した彼らは、クルー達のその容貌に少なからず嫌悪感を感じる。
それも当然なのかも知れなかった。
わざわざ異世界の騒動に、命をかけやってきた彼ら。元の世界において、彼らはいずれも劣らぬ屈強な男達、戦士たちである。戦士たち・・・キレイな言葉で言えばそうだが、シジュザールたち特権階級の者たちから見れば、無法者、賊。どちらかというと、討伐すべき輩である。
一様に丁寧に彼らを受け入れてはいるが、どれもうさんくさい目つきの者たちちばかりである。
寝首をかかれはしないか?案内してきた巫女にしても、彼らに脅かされて我らを誘ったのでは?・・・そんな思いがふと王子の脳裏に浮かぶ。

そして、海賊たちも鈍感ではない。平静を保ってはいるが、その視線の中に軽蔑、あるいは、敵視とも言える光を感じ取り、お互い目配せする。


「あの・・・・」
海賊船の一室でテーブルを挟んで対面した彼らは、軽く自己紹介しただけで、双方とも黙り込んでしまっていた。
「ああ、申し訳なかった。少し圧倒されていたようだ。」
心配げに皆を見ている麻依に、カルロスは慌てて口を開いた。
「で、巫女殿の計画では、双方から腕のたつものを選び、光の聖地の所在地の解明と、そこまでの旅、そして、聖地奪回でしたな。」
「はい。」
「残ったものは、海と陸との両方から、闇の手の目をひきつける陽動作戦を取る。瘴気に侵されていない人々の探索と彼らと連携して、安全エリアの拡大を図り、人々を救っていく。」
「ええ。それが一番の近道だと思うの。闇を完全に追い払うには、やはり光しかないわ。」
「そうですね。」
「しかし、本当に、あなたが、光の宗主の座につけるのですか?」
「・・・・」
カルロスとの会話に割って入ってきたシシュザールの言葉を受け、麻依は一呼吸置いてから応えた。
「それなき場合、解決作はありません。世界はこのまま闇に飲み込まれます。」
「麻依殿。では、我々は、不確かな作戦の為に命をかけるのですか?」
「他に方法がねーんだから、しかたねーだろ?それとも何か、王子さんよ?あんたにゃ方法があるってのか?」
「リーファ!」
「麻依さん、あんたが連れてきた味方らしいが、気にいらねーな。頭っからオレたちを信用してなどいやしねー。故郷を捨て、オレたちはオレたちの未来をこの世界にかけてやって来たんだぜ?それを・・」
「我々に恩を着せ、何が目的なんだ?」
「何を?」
「待って!リーファ、落ち着いて!」
「殿下!彼女は、リュフォンヌが呼び寄せたお方なのですぞ?」
リーファのすぎる口を止める麻依と、そして、シシュザールを止めるカルロス。
「しかし、元はといえば、そのリュフォンヌとて、魔女と言われた人物。果たして本当に人民の事を考えてくれているのかどうか」
「殿下!」
思わず声を荒げて叫んだカルロスのその勢いに押され、さすがのシシュザールも言い過ぎたことを感じる。
「麻依殿、一旦我々は戻った方がよさそうです。時期を見て、改めてまた話し合おう。」
「そうね、カルロス。その方がよさそうだわ。」
双方とも険悪なムードが漂っていた。
(焦りがあったかしら?もっと事前に準備をしてから双方を引き合わせるべきだった?)
残念そうに頷き、麻依は、カルロスの提案を受け入れ、彼らだけを迷宮へと戻した。


「巫女様・・・」
「紫鳳・・・・うまくいかないものね。私はみんなのこと、最初会ったときからなんとも思わなかったんだけど。」
「それは、巫女様が誰でも分け隔てなく接する性格だからでしょう。風貌や職業でその人のランク付けは決してなされない。しかし、世の中にはそういった人の方が多いのですよ。特に、特権階級、いわゆる貴族階級の人物は、そういった考えの人が多い。こちらはならず者の集団でしかないのですよ。」
「でも、この世界の人たちの協力は必要なの。聖地の所在地を調べるには、この世界の人たちでないと、私たちでは、どこをどう調べていいのか分からないもの。」
「確かにそうですが、少し時間が必要なのも確かですな。」
「・・・そうね。」
「あのカルロスとか申した騎士、彼に協力を頼むのも得策かと思われます。」
「カルロス・・そうね、彼は、みんなを蔑視した目では見てなかったわ。」
「向こうは彼に、そして、こちらは・・・やはり巫女様にがんばってもらうしかないですが・・・」
「そうね。がんばるわ。」
苦笑をし、麻依は船窓から暗い空をしばらく見上げていた。


Special thanks 紫檀さん(イラスト)

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