2006年04月07日

黄金郷アドベンチャー・本章1/その4・麻依と神官紫鳳

 「合同は・・難しいようだな。」
「合同?あんな奴らの手など借りる必要はない!」
麻依は船の一室でクルーの意見をまとめてきた海賊たちの筆頭である船長のリーファと紫鳳、そして紫鳳神官との4人で改めて話し合っていた。
麻依の気持ちを察し、控えめにそう言った紫鳳船長にリーファが怒りを露わにした口調で半ば怒鳴るように吐く。それはまるでけんか腰ともとれた。
「待ってちょうだい、リーファ、今は仲間割れしてるときじゃないのよ?」
「仲間?奴らがか?あんただって気づいてたじゃないか!あのいかにも見下した表情・・・・特権階級の奴らにとって、おれ達海賊なんてなー、屑以下としか思っちゃいねーんだよ!」
「リーファ、きっと分かってくれるわ。最初からそんなにいがみ合ってては・・」
「なら・・奴らの方こそ頭を下げるべきなんじゃないか?あいつらがおれ達に対する意識を変えてくれねー限り、無理ってもんだぜ?いくら麻依さんの頼みであろうと。あんただってそこんところは分かってるはずだ。あんただって少しは頭に来ただろ?」
「・・・でも・・町の人たちまでそうとは限らないわ。」
「で?おれ達に頭を低くして向こうに行けってか?まっぴらごめんだぜ。」
「リーファ・・・紫鳳船長・・・」
麻依は助けを求めるように紫鳳船長を見る。
が、彼も、リーファのようにはっきりと口にしないまでも、同じ思いだった。ただ先を考えれば、なんとかしたいとは思うが。
「私が・・私が彼らによ??く話して、分かってもらってきます・・ここでは対等なのだと、同じ志を持つ仲間なのだと・・・」
ふっと麻依の意識が遠のき、神官紫鳳は慌てて倒れかかった彼女を抱き留める。
「巫女様っ!」
(あ・・・)
それを見て、リーファと紫鳳船長は、何も彼女にそこまできつく言うべきではなかったと反省する。
「少し休ませてきます。洞窟は遠い、私が補助したとはいえ、巫女様はほとんど霊力を使い切ってしまわれております。いえ、霊力以上に、精神力もかなり消耗されておりますから。」
「あっと・・・大丈夫・・か?」
「はい。無意識のうちにストッパーがかかったのでしょう。少し休めば回復されるはずです。」
「あんたは大丈夫なのか?いつもそうして麻依さんを気遣っているが?」
「私は男ですから。」
「なら、いっそあんたが頭になったらどうだ?こうまで苦労し続けている彼女が痛々しいとは思わねーのか?」
「巫女様だからこそ、私の力も引き出せるのです。そして、良い方向へとその力を使ってくださるのです。私になど任せると・・・どうなるのかわかりませんよ?」
「は?」
謎めいた言葉を残し、神官紫鳳は、麻依を抱き上げてその部屋から出て行き、2人は他に言葉も見つからず、その後ろ姿を見送った。


「そう・・私なら・・・・ここまで衰弱しきるまで巫女様を追いつめるようなことはしない。私なら・・・・・」
麻依の船室へ彼女を運び、そっとベッドに横たわらせた神官紫鳳は、しばらく彼女をそのまま見つめ、切った言葉の先を心の中で呟く。

(そう・・私なら、巫女様を悩ませる全てをこの世から排除し、全てを破壊し、何もない静かな闇の中で巫女様と2人、永遠の時を無となって漂うものを。巫女様だけを感じ永劫の時を・・・)
ふっと紫鳳は笑う。
(しかし、巫女様は決してそうはさせてはくれぬ。巫女様が目指すは光、いや、すでにその身に光を宿らせておられる。・・・どこでどう違えたのか、巫女様は闇の領分だったはずなのに。翠玉の巫女・・・地の宝玉。それが地に潜らず天に昇ろうとしている。そして、私は・・・)

心の中の呟きは聞こえてはこなかった。
だが、紫鳳からにじみ出ているオーラから、なんとなくその言葉を感じたのか、麻依のペットであり神獣のゆきは紫鳳のそんな言葉をはっきりとではなかったが読み取り、麻依の横たわっているベッドの淵に飛び乗ると、毛を逆立てて威嚇した。
「ふぅ????????!!!」
紫鳳は、そんなゆきの威嚇などものともせず、少しわざとらしく見える涼しげな笑みを残し、部屋から出て行った。


その翌日・・・
船室のドアが開き、そこから麻依が顔を出し、何かが足下にあるような感じを受け、視線を降ろす。
「あらあら・・・・」
そこには、ごっちゃりといろんなものが置いてあった。

「ふふっ♪みんな、気落ちしてる私を慰めようとして・・・でも・・・いかにもみんならしいものだけど・・・なんか笑えて・・・」
麻依はくすくすっと小さく声をあげて笑い始めた。
ドアのところに置いてあったのは、およそ女性をなぐさめるアイテムとしてはほど遠いものだった。
場所が場所、立ち寄る港などない。それでも、彼らなりに一生懸命考えてプレゼントしてくれたのだろう。
酒樽、一升瓶に入った酒、缶ビール、少し洒落て?ワイン。海賊島特産地ビール。紅茶とコーヒーセット。わざわざ奥さんか恋人に焼いてもらったのかクッキーやパン。そして、ヒモノの束・・・/^^;

「あは♪私ってそんなに酒豪と思われてるのかしら?」
あはははは・・・・いつの間にか声をあげて麻依は笑っていた。

「ゆき?そこにいるんでしょ?いらっしゃいな。ヒモノでも食べる?」

たたたっとゆきは麻依の元へ走っていく。
「ゆき、昨日はごめんなさいね。私、ちょっと弱気になってた。でも、もう大丈夫。だって私にはこんなに素敵な仲間がいるんですもの。」
「そうだにゃ♪」
「それから、ゆきもいるし。」
「にゃはははは♪」
「問題は山積みだけど、いつもの天然で突き進むわ。なんとかなる!時が来れば解決策も見つかるわ。」
「そうそう、その調子にゃ♪」

「しかし、麻依・・・」
「え?なーに?」
ヒモノを食べていたゆきが、不意に神妙な口調で麻依に話しかけてきた。
「もう少し紫鳳には気をつけた方がよいのではなのか?」
その口調は、仮の姿のペットである猫のものでなく、神獣のものだった。
「紫鳳って・・・ああ、船長じゃなく神官の方ね?」
「そうだ。」
「・・・でも、私は信じてるわ。紫鳳は決しておかしなことはしない。だって、しようとするなら、いつでもできるもの。テレポートの幇助の時にちょっと霊力の流れを変えれば、簡単なことよ。」
「ふむ。敵である闇王の膝元へ飛ばす事も可能だな。」
「そうよ。それをしないで私の補助に徹してくれてるわ。そんな彼をどうしようっていうの?」
「まー・・そうなんだが・・・・いつ寝首をかかれるかしれんぞ?」
「それは・・そう、覚悟の上で紫鳳と血の誓約を結んだのよ。・・・彼を窮地に立たしてしまってるとは思うけど・・。闇王と私との板挟みで苦しんでいるんじゃないかしら?」
「まー、それもあるだろうが、その程度のこと、あいつならどうってことないだろう。割り切って今は麻依の忠実の部下の顔をしてるんだろ?だが、闇王から何か命が下ったら・・・麻依・・・わからぬぞ?」
「その時はその時よ。うまく立ち回るわ。」
「おいおい・・・相変わらずお気楽天然だな。」
「だって、それが私の専売特許だもの。」
不安を吹き飛ばすように、2人・・いや、1人と1匹・・あ、神獣を匹と言ってはまずい?・・・ともかく、麻依とゆきは明るく笑った。(少なくとも表面上は)

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