2006年04月09日

黄金郷アドベンチャー・本章3/その1・光の塔への道

 「ファス、提案があるんだけど?」
「なんだ?」
疾走するファスの上、麻依はふと思いついたことを提案する。
「あなたの速さに光のスピードを乗せたら・・ううん、光が進むその上を駆けたらどうかしら?」
「光の?・・確かに光のスピードはこうして足で駆けるより速いが・・・そんなことができるのか?」
「分からないけど、やってみてもいいんじゃない?光のエナジー弾の上を・・・走れるかどうかは分からないけど。」
「そうだな。・・そうだ、同じ光の保護膜を纏うというのはどうだ?」
「いいかもしれないわね。じゃ、さっそくやってみるわ。まずは保護膜からね。」
「ああ。」
麻依は軽く目を閉じると頭の中にイメージする。自分の中から出たエナジーが、ファスト自分を覆う。麻依自身は必要ないとも思われたが、ファスト一体になって駆けなければ意味がない。麻依は一つの保護膜の中に自分とファスを入れた。
そして、一旦ファスは立ち止まる。
「じゃ、エナジー弾を作るわね。タイミングを間違えないでね。放出と同時にその上にうまく乗ってちょうだいね♪」
「任せておけ!満場喝采の玉乗りをしてやろう♪」
「あはは♪ファス、冗談が出るなんて余裕たっぷりね?」
「いや、これでも結構緊張してるんだぞ?」
「そう?・・・実は私も。」
「ほう、スーパー光の巫女様もそうか?」
「やーね、ファスったら。じゃ、行くわよ!」
「うむ。」
冗談っぽく笑っていたその顔をきりりと引き締め、麻依は光玉を形成しはじめる。
(もっと!もっと!最大限にまで!先はどのくらい続いているか分からないから。途中で消滅するようなことのないように!)
そして、できたら乗りやすいように上部は平たくイメージしつつ、麻依はエナジーを最大限凝縮しつつ光玉を作り上げていく。
「ファス、行くわよ!」
「おおっ!」


光のエナジー弾の上に乗ったファスと麻依は、その勢いで霧を切り裂くようにしてぐんぐんと突き進む。
そして・・・
「ファス!」
「ああ!霧で紡ぎきれてない穴が見えた!」
「ファス、ありがとう、あなたにはとっても感謝してるわ。」
「ははは。まだ結果がでてないぞ?」
「もう出てるのも一緒よ♪・・・この世界のことが無事解決したら、お礼に伺うわね。あの洞窟でよかった?」
「ああ、オレはいつもそこにいる。」
「じゃ、最後にもう一発いくわ!夢馬も必死になってトンネルを紡いでいるみたいだから。」
「そうだな、これでもかというくらいのスピードで飛び込んでやろう♪」
麻依は背後に向かって勢いよく光玉を放った。
その勢いに押され、光玉の上のファスが猛スピードで進む光玉から、前へと突き進む。ちょうどロケット発射時のときのように。(って、ロケットに比喩していいのか?この時代?・・・ま、いいか(おい!

「楽しかったぞ、また会おう、”まいむ”」
「会えて嬉しかったわ。またね、ファス♪」
出口に突入したことを確信し、消えゆくファスと麻依は、最後にテレパシーでそう言葉を交わした。
「さ??て、出たところは地獄か天国か・・・?」
何があろうと私は無事脱出する!固い決意で麻依は時空の激流の中に身を任せた。(もちろん光の保護膜はきちんと張っている)


ぱち!と麻依の目が開いた。
そこは聖堂。出た場所はそんな深刻なこともなく、普通に夢から目覚めただけで、麻依は少し拍子抜けした。(笑
が、仲間を見渡すと一様に夢の中でもがいている風だった。
「がっかりしてる場合じゃないわ。みんな、かなり深刻な状況に陥ってるみたい。」
すっと立ち上がると、円陣を作った形で眠っている仲間たちの中央に立ち、自分の中の光のエナジーを増幅させる。
(木の王のおかげで。底をつくくらいの光玉を作った後だけど、大丈夫、まだまだ・・ううん、いくらでもエナジーはわき出そうよ。希望という光のエナジーが。)
そのエナジーを仲間に照射し、光をそれぞれの夢の中へと射し入れる。
「みんな、私の声が聞こえる?光が届いてる?さー、手を伸ばして光を掴んでちょうだい!悪夢から脱出するわよ!」
麻依の希望の光のエナジーが聖堂一杯に広がっていく。


その光の中、麻依はふと前方が、自分の放った光のエナジーの白金の色より濃い黄金色の光を認め、近づいていく。
「こ・・・・・これって・・・・・」
そこにあったのは黄金に光輝く階段。
「まさか、天国への階段ってことは・・ないわよね?・・・・これは夢なんかじゃないはず。」
階段の真下まで進み、どこまでも続いていると思えるその階段の上を見上げてみた。
『マイ・ム・リュ・オーシュ・・マ・・イム・・・・それが、光の塔の階段。さあ、お上りください。宗主の座が・・あなたのお帰りを待ってます・・リュオーシュ・・・マイム・・・・』
麻依の過去生、摩衣夢の守り手であり、麻依をこの世界へ導いてくれた碧玉の声が、麻依の頭にやさしく響いた。

「巫女様?!」
「麻依?」
未だ聖堂内一杯に広がっているその光の輝きの中、目覚めた仲間たちが目の前の展開に驚き麻依に声をかけた。
麻依は後ろを振り返り、にこっと微笑み、一人で大丈夫だと視線で合図する。
そして、再び前を向くと、ゆっくりと階段を上り始めた。
黄金(こがね)色に輝く階段。が、そこからは濃縮された闇の気が下りてきていた。
「闇の宗主が階段の途中で待ってるみたい。話があるらしいわ。」
「巫女様?!」
紫鳳の悲痛な叫び声が麻依の耳に飛び込んだ。
「碧玉のテレパシーがあったから、この階段が偽物なんかではないことは確かよ。でも、そう簡単には上らせてくれないみたいね。」
「お待ち下さい、巫女様!私も一緒に!」
「あたいも!」
「私も行きます!」
「オレも同行するぞ!」
すぐにでも駆けつけてきそうな仲間を、麻依は振り返らず手で制した。
「彼が用があるのは光の宗主だけ。この階段は、私の光玉に引き寄せられてここまで延びてきたの。たぶん、登れるのは私だけ。」

まるで金縛りにでもあったように、紫鳳、伊織、イーガ、カルロスの4人の動きは止められていた。
きっと前方を見据え、階段を1歩1P歩上り始めた麻依を、4人はただ見送るしかなかった。

黄金郷アドベンチャー・本章3/その2・黄金郷を目指して!

 「ええ?????紫鳳、そんなのないわ!私がみんなをここへ引き連れてきたのよ?最後まで一緒に行動してこそ責任が果たせるというものじゃなくって?」
「いえ、ですから巫女様、巫女様はもはや普通の巫女様でなく、この世界の光の宗主様なのでございますよ?!」
「それがどうしたのよ、なぜ私が一緒に戦っちゃいけないの?私は私!光の宗主なんて肩書きをもらおうとなんだろうと、私は私よ!どこも変わってないわ!ね、そうでしょ?紫鳳船長、リーファ船長?」
「い、いや・・それをこっちに振られても・・・・」

そこは海賊船の一室。海賊の主立ったメンバーと神官紫鳳とそして麻依がいた。
「リュフォンヌも眠っていなくてはならないほどのパワーで結界を張らなくても良くなったわ。彼らはそのリュフォンヌを中心にして町を、そして国の復興に力を注いでる。私の光のエナジーを受け取って世界各地に散った僧侶や魔導師たちは、陽の光が直接当たらない影のようなところへその浄化の為、足を運んでくれてる。
後は、私たちの目的だった黄金郷へ行くことじゃないの!光の宗主の膝元。太古から宗主を輩出してきた光の一族の街。それが今は魔族に占領されてるのよ。自分の街をこの手に取り戻しに行くんじゃない!それのどこが悪いの?」
「しかし光の宗主の座につかれた御方が下々の事にお関わりになられるのは・・・」
「紫鳳!」
神官紫鳳が全部言い終わらないうちに、麻依がテーブルを勢いよく叩いて立ち上がった。
「下々のって何?私は、そんなに偉いの?」
「はい、そうでございます。」
あらららら・・・・そこで紫鳳が口ごもることを予想していた麻依は、しれっとした顔で即答された紫鳳に肩すかしを食らわされる。
「このような下々の事に関わられ、もし万が一、光を受け止める力が弱まってしまわれたら、どうなさるのです?代が変わる毎に宗主の光のパワーが弱まった、その理由だけで、闇の宗主は一族を滅ぼすことを決意したのですよ?その闇の宗主から、あなた様のパワーなら均衡を保つことができるだろうと太鼓判をいただけたのです、いわば相反する敵の総元から認められたのですぞ?」
「ええ、そうよ♪認められなければ、私が上っていったあの光の階段の先は、天国に繋がることになっていたでしょうから。」
「ですから・・・地上での諍いに首をつっこんで怪我でもされたら・・」
「大丈夫よ。身体は鍛えてあるわ!」
「巫女様!」
「でも、私は言い出しっぺの責任を!!」
「言い出しっぺの責任っていうんなら、もう済んでるんじゃないか?」
「え?紫鳳・・・船長?」
「あんたはオレたちに夢をくれた。そして現実にここまで連れてきてくれた!黄金郷、男のロマンだ!その黄金郷を目指し、これから本格的に大暴れ!海賊の血が騒いでならねーんだ。そんな男たちの中に、どっちかというと・・・言いにくいが・・・」
紫鳳船長はリーファに後は続けろよと目配せする。
「言いにくいが・・な??に?」
「つまりだ・・宗主がいて勝ったんじゃ、オレたちの功績にゃならねーのさ。」
苦笑しながらリーファが口を添えた。
「私がいては?」
「ああ、そうだ。仮にあんたが自分が引くことを認めたとしても、オレたちの相手が闇の眷属であることから、紫鳳神官は置いていこうとするだろう?」
「え、ええ・・」
「それもオレたちとしてはよしてほしいんだ。」
「その点はご心配なく。私は巫女様をお守りするためにここにいるのですから、巫女様が引かれるのであれば、私は巫女様のおそばにつきますので。」
ドドドッ・・・・至極当たり前のように少しも躊躇せずその言葉を口にした神官紫鳳に、紫鳳船長もリーファ船長も、そして、麻依もずっこける。
「ま、まー・・とにかくだ・・・・向こうの宗主様は、向こうの世界からこっちに来た者たちがどうこうしようとどうなろうと一切関知しない、って言ったんだ。それをこっちばかり宗主がついていたんじゃ卑怯ってもんだろ?」
「だから、宗主の力は封じてって言ってるでしょ?」
「ダメだよ、麻依さん。ま、こうして話すくらいならいいが、街を占拠した魔族どもと一戦まみえるんだ。(一戦じゃすまないし)あんたが後ろ手でおとなしく戦って(?)いてくれるとは思えねぇ。まず、先陣を切ってつっこんでいくだろ?」
「あら・・分かる?」
そんなことはここにいる全員承知してるぜ、という顔で答えてからリーファは続ける。
「何かの拍子に大怪我でもされたら大変だ。闇の宗主が、均衡が保たれているからこそ世界も存続できるなんて言ったらしいが、きれい事を言ったその口もかわかねーうちに、きっとまたその勢力をこっちの世界へ送ってくるぜ?麻依さんは、こっちへの侵攻が闇の宗主の意志でなく、力のバランスが崩れたせいで宗主の意志に反し、勝手に流れ込んだと思いこんでるみたいだが・・・それこそが奴の狙いなんじゃないのか?」
「・・・でも、私には彼が悪人には見えなかったのよ。」
「それは巫女様がこの世界の闇の宗主に、あの方を重ねて見てしまったからではないですか?」
あの方が一休を指すのだと麻依にはピンときた。
「そんなこと!」
「言い切れますか?代々力を無くしていく光の宗主に代わり、自分の力と同等の光を抱けるものをこちら側の世界に据える為という口実で、光の一族全てを滅した輩ですぞ?」
「そ、それは・・・・・」
麻依は紫鳳のその指摘に反論する言葉が見つからず口ごもる。
「私はこう思います。あわよくば鏡面世界の両方をそっくり手にいれようとした。しかし、次期宗主の未来の生であるあなたが現れた。しかもその力は自分の力に匹敵する。いや、怒らせたらそれ以上かもしれない。」
うんうん!と”怒らせたら”の紫鳳神官の言葉に、紫鳳船長、リーファ船長他クルーは、頷く。
「そうなったら現状の反対になるかもしれない。」
うんうん!再びそこにいる一同は頷く。
「だから、そこで一線を・・・境界線を引いたのです。いわば、不可侵条約といったところでしょうな。」
「でも、紫鳳、あのときは階段の途中よ。私はまだ宗主じゃなかったわ。宗主の座に就く前なのよ?」
「それでも感じたのでしょう。ここであなたを亡き者にしようとしても、あなたは、その不屈の精神で必ず起死回生し、例え宗主の座についてなくても、自分こそが滅せられるかもしれないと。」
「・・・私は彼から話を聞けば聞くほど、世界の均衡を保つ為に、私の成長を見守ってくれてた(る?)と感じたけど。」
「お人がよろしいですからな、巫女様は。」
「あら、怒るときは怒るわよ。拒絶するときは拒絶するわよ!」
「まー、そうでしょうが・・・」
「なんだかひっかかる言葉ね、紫鳳?」
「ま、とにかくだ・・・」
いつまでも同じ議論が続きそうだと判断した紫鳳船長が、ごほん!と咳払いをしてから言った。
「オレたちにはオレたちのロマンもそして意地もメンツもある。オレたちはオレたちの夢をオレたちの腕で取りたいんだ!」
「・・・・私は・・仲間じゃないっていうの?」
「あ、い、いや・・麻依さん、そこで涙を浮かべないでくださいよ!」
「巫女様、暴れたいのは分かりますが、嘘泣きはやめてください。」
「・・・・・紫鳳ったら・・・・」
「麻依さん!」
「はい!」
不意に麻依の手をぐっと握りしめ、真剣なまなざしでじっと見つめる紫鳳船長につられ、麻依も真剣なまなざしを返す。
「オレたちを信用してくれ!そして光の塔の頂上から見守っていてくれ。オレたちがこぞって塔へ凱旋していくのを待っていてくれ。オレたちは必ず黄金郷を、光の一族の街を取り戻してみせる!」
「紫鳳船長・・・」
「そして、そこがオレたちの永住の地になる。浮き草だったオレたちの国だ!国興しなんざ、そうざらに体験できるもんじゃーねーぜ?しかも誰もが夢見てあこがれる黄金の国だ!」
「紫鳳船長・・・リーファ・・・」
「よし!決まったな!」
「はい。」
「紫鳳・・なぜあなたがそこで返事をするのよ?」
「強情な巫女様が口にしづらい言葉を代弁してさしあげただけです。」
「紫鳳?」
「麻依さん!紫鳳神官!ここでせっかく意見が合いそうなのに、水を差さないでくださいよ!」

あとは、そこにいた全員の笑いで部屋は埋まった。

『闇が勝(まさ)ってもまた光が勝(まさ)っても、世界は維持されぬ。闇があるから光があり、光があるからこそ闇がある。私は世界の半身に私同様の力を維持していてもらいたいのだ。』
麻依は、前戦の景気づけだと大いに笑って語り合いながら酒を酌み交わす彼らを見つつ、闇の宗主の言葉を思い出していた。
(力が弱ければまるごと飲み込むぞという意味合いも・・確かにそこにあった・・・・わね・・・・・)
麻依にはなんとなく未来の闇となった一休と光となった自分との出会いの疑似体験をしたような気がしていた。
そこには憎しみも敵対心もなかった。たぶん、お互いに。
純粋に両極の象徴としての存在として、1つの世界(鏡面世界で別れてはいるが)を成す存在として、対峙していた・・・・と、麻依は思った。
決して相容れない相手だが、片方の消滅は自分の消滅をも意味する。
(あら?ひょっとして私の力が弱かったら、私を傀儡の光の宗主にでもしようと図ってたのかしら?)
ふとそんな考えが麻依の脳裏をよぎった。
(でも、傀儡にして何がどうなるのか・・しら?)
一人苦笑しつつ、麻依は、おとなしく光の塔でみんなを待つことにした。
みんなの力を信じて。

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